「関係」は抽象
抽象的と言われて、頭がぼんやりする人も多いと思います。抽象の反対は具体で、具体的なものは目に見え、触れることが多いので、それほど難しいとは感じないものです。例えば、
1)チョコレート、クッキー、ケーキ
2)スイーツ
1)と2)を比べると、1)は具体で、2)は抽象です。
しかし、
3)食べ物
というのが出てくると、2)と3)の比較の中で2)は3)に比べて具体的だと言えます。
いちごケーキ、モンブラン、ミルフィーユなどと比べると1)のグループにあるケーキも抽象となってしまいます。
言葉は、他の言葉との関係性の中で、その意味や性質が決まります。
この「関係」というのが、もう抽象的な思考の始まりです。
僕が初めて小学3年生に授業をした時のことです。
「〇〇と〇〇の関係は、どんな関係かな?」と問うと
「先生! 関係って何ですか?」と元気よく質問されました。
そうです。抽象的思考は、ちょうど小学生の3、4年生に芽生えると言われています。この授業は5月と記憶していますから、ちょうど3年生になったばかりの子どもたちには関係という概念はまだ定着していなかったのです。そのことを身をもって知った体験でした。
例えば、国語の教科書には漢字が出てきます。文科省の配当漢字と言われて、文科省が小学生のうちに習う漢字を学年ごとに決めています。小学3年生で「悪」小学4年生で「愛」が出てきます。もちろん、具体と抽象という並びだけではなく、手先の動き(小学1年生は画数の多い漢字を書くことは身体機能的にまだ困難)にも応じて配当されているようですが、3、4年生で抽象的な概念となる「悪」や「愛」が出てくることは、これらの学年で抽象的な思考力を意識している現れのように感じます。
英語における抽象的思考とは
英語は、小学5年生または中学生から学びはじめ、中学生のうちは基本的な文法事項(運用ルール)の習得に力点があるため、それほど複雑な文は出てきません。
しかし、生徒を見ていると、つまずきのポイントは
・不定詞
・第Ⅳ文型
・第Ⅴ文型
だと感じます。
その3つについて、どんな「関係」が潜んでいて、どのような抽象的な思考力が問われ、暗記だけでは乗り切れないかを見ていきましょう。
不定詞における「関係」
不定詞とは、不定「まだ定まっていない」言葉。何に定まるようになるのかといえば、名詞、形容詞、副詞のいずれかです。それが、名詞的用法の不定詞、形容詞的用法の不定詞、副詞的用法の不定詞と言われるものとなります。名詞や形容詞や副詞は、何を修飾するかという「修飾関係」で決まります。関係を見るためにはまず、AとBという2つの要素を特定する必要がありますが、苦手な子どもは、要素の特定から曖昧です。
例文
I go to the station to meet him.
to meetは、
goという動詞を修飾します。
動詞を修飾するのは副詞。
だから、to meetは副詞的用法の不定詞。
と考えますが、その過程で、
1)to meetという不定詞を特定し、
2)それが修飾しているgoという動詞を捉えて、
3)動詞を修飾する品詞は副詞だと考える必要があります。
個別具体である「A」と「B」の関係性を見て取り、動詞を修飾するのは副詞だと、一般的な概念で処理。抽象的な思考です。
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第Ⅳ文型における「関係」
第Ⅳ文型はSVOOで、その文型をとる動詞群を授与動詞と呼ばれます。
人に、物を与えるというのが、この文型の基本的な意味です。
例文 I teach him English.
第Ⅳ文型は、第Ⅲ文型(SVO)まで学んだのちに出てきますから、O(目的語)が一つ多く書かれていて、名詞が二つ並ぶということに違和感を覚える生徒も現れます。しかし、この例文のように、Oが短い単語なら、それぞれの言葉を日本語に置き換えて、何となくそれらしい訳に繋げて見せることもできそうです。当然、そういう生徒は、長い文になれば頭が混乱します。これも、動詞を見て、第Ⅳ文型と理解し(動詞が文型を決める)、OとOを特定し、O(人)にO(物)を与えるという関係性を見て取る必要があります。
teachは、教えるという意味ですが、Iの持つ知識をhimに提供するという意味で授与動詞となります。
第Ⅴ文型における「関係」
関係性を見極める力が最も問われるのは第Ⅴ文型(SVOC)です。これは、
・OとC、とりわけCを正しく特定できて(馴染みのある形容詞以外にも、現在分詞、過去分詞、原形不定詞なども)
・OとCの関係性を理解し(多いのはs’v’の関係)
・Sを副詞的(多いのは因果関係)として訳せるか
という関係性の塊みたいなものがこの文型です。
言語の運用規則の本質は、関係性だと言ってもいいと思います。
中学1年生で主語が三人称単数で、時制が現在ならは、動詞にはⅢ単現のsをつけると教わります。
例文
He plays the guiter.
これも、主語と動詞の「関係性」が問われています。
英語の関係性の最も困難に思われるものがこの第Ⅴ文型だと見られているので、大学受験でも頻出となっています。
また、動詞の時制は、副詞句や副詞節との関係などで決まります。
例文
I wrote this letter six years ago.
⇨six years agoがあるから、動詞は過去形
では、第Ⅴ文型の例文です。
例文
You make me happy.
⇨make meまでだと、makeは第Ⅲ文型か第Ⅴ文型かまだわかりませんが、
その後ろにhappyという形容詞が出てきました。
形容詞は補語(C)になるので、ここでSVOCの第Ⅴ文型が確定します。
OとCの関係は、S’V‘、つまり、私は幸せな状態だ。
第Ⅴ文型のSは、副詞的に、主に原因として訳すので、私が原因で、しかしhappyとプラスのことですから、「あなたのおかげで」でいいと思います。「私は幸せです」
まとめ
英語は、というか、語学の運用ルールは関係性でできています。
関係性とは、AとBという要素の確定ができ、その要素と要素の繋がり方や関わり方を検討することです。
検討とはいえ、ほぼ選択肢は決まっていますから、どれになるのかを考えるまでです。
ネイティブは、これを、経験則によって会得し、日常で使い、子供などは時々初めてのケースに出会い、試行錯誤で使いながら間違え、それに気づき、修正してルールを強固なものにしているので、自然と英語が使えるようになります。
母国語が日本語の私たちは、まずルールを知ることが英語マスターの近道です。ルールは暗記だけでは限界があります。「関係性」という観点で理解をすることが大切です。
付録 覚えて使おう
名詞(n:noun)の性質
主語(S:Subject)、目的語(O:Object)、補語(C:Complement)になる。前置詞の目的語(O)になる。
形容詞(a:adjective)の性質
名詞、代名詞を修飾する。補語(C)になる。
副詞(ad:adverb)の性質
名詞以外(動詞(V:verb)、形容詞(a)、副詞(ad))を修飾する。文全体を修飾する。
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